お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 階段を駆け上がった先には長い廊下と、左右にドアがふたつずつ。澄花は手っ取り早く手前のドアを開けた。


(いない!)


 中は客室のようで、美しくベッドメイキングされた天蓋付きのベッドと小さなテーブルセットがあるだけだ。


「じゃあ隣……っ……!」


 ドアを開け放ったまま、その隣のドアの前まで走り、ノブに手をかける。その次の瞬間。ドアが内側から開いて、大きな影が飛び出してきたと思ったら、体当たりするように抱きつかれ、そのまま前が見えなくなってしまった。

 ぎゅうぎゅうと体がしめつけられる。息が苦しい。


「あっ……!」


 突然のことに驚き、仰け反るように顔を上げると同時に、ネイビーブルーの瞳と視線がぶつかり、そしてそのままかみつくように、唇を奪われていた。


(龍一郎さんっ……!?)


 そう、それはまごうことなき龍一郎だった。ネイビーのスーツの三つ揃えで、上着を脱いだベスト姿だが、間違いなく、澄花の夫の葛城龍一郎その人だった。


「なんでっ……なんで君はここに来たんだ!」


 唇を離し、身をよじるような悲痛な声を、龍一郎は絞り出したかと思ったら、

「なんでって、私、あなたに会いに――」
「澄、花っ……」

 大きな手のひらで澄花の頬を包み込み、今度は口の中に舌をねじこむ。

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