お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「え?」
ぐいと引っ張られながら、澄花は今まさに自分の腕を引いた龍一郎の顔を見上げていた。
(なぜ……?)
目を丸くしたが、龍一郎は自分を見ていなかった。
澄花の腕を自分の体の後ろに引っ張りながら、立ちはだかるように仁王立ちになった。
そしてきっぱりと堂々とした声で言い放つ。
「彼女はどこの誰でもありません」
「なっ……」
澄花は頭を殴られたようなショックを受け、息を飲む。
(どうして……どこの誰でもないって……どうしてそんなこと……)
だが龍一郎が本気でそう思っているはずがない。それは澄花にだってわかっているのだが――。
「嘘おっしゃい」
老女は龍一郎の言葉を聞いて、声を尖らせた。
「あなた今、その女と見つめあっていたじゃない……!」
そして老女は、神経質そうに声を震わせたかと思ったら、体当たりするように龍一郎へと近づいた。