お気の毒さま、今日から君は俺の妻
そこでようやく老女の声がやわらぐ。
「あなたはいつもそう……甘いもので誤魔化して……いいわ……許してあげます……」
「ありがとう。すぐに私も行きますからね」
龍一郎も優しく微笑んで、それから背後を振り返った。
それが合図だったのか、
「お嬢さま」
と、古河が駆け寄ってきた。どうやら階段の途中に控えていたらしい。
小さく龍一郎と澄花に頭を下げ、車いすのハンドルに手をかけると、ゆっくりと方向を変えて開け放たれたままのドアの内側に入っていった。
バタンとドアが閉まる音を合図に、廊下にまた静寂が戻る。
「――龍一郎さん」
澄花が声を絞り出すと、龍一郎がゆっくりと振り返った。
「彼女は葛城琴乃。私の祖母にあたる」
「おばあ様……」
やはり彼女は龍一郎の血縁者だったのだ。