お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「いろいろ事情があるんですね?」
「ああ」
龍一郎はうなずき、それから閉められたドアを振り返った。部屋の中の様子を気にしているようだ。
「行ってください」
それを見て澄花はすぐにそう言った。
「澄花……」
「さっきすぐに行きますってお約束されてたから……お待たせしないほうがいいと思います」
「ああ」
すべての事情の原因が彼女の存在なのかもしれない。
澄花はこの屋敷から、その空気を感じ取っていた。
「私も、帰りますね」
絶対に龍一郎と帰ると心に決めてここに来た澄花だが、さすがにこの状況で龍一郎を連れて帰ることはできない。
「今日、夜中にしか戻れないが」
「え?」
「帰る。必ず」
龍一郎は、そのまま片腕を伸ばして澄花を抱き寄せると、澄花の耳もとで熱っぽい声で、ささやいた。
「俺の帰る場所は、君がいるところなんだ」