お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 こうやってがむしゃらに愛し合って、好きだという気持ちを思う存分吐き出して、お互いに少し気持ちが落ち着いたようだ。
 実際、帰って来た時はベッドに倒れ込んだら五秒で意識を失いそうだと思ったのに、今、澄花の頭と心は怖いくらい冴えている。


(もしかしてアドレナリンでも出てるのかな……)


 そんなことを考えてしまい、澄花はふっと唇に微笑みを浮かべる。

 そして龍一郎は無言で、そんな澄花の後頭部と、背中をゆっくりと愛おしげに撫でている。まるで猫の毛並みでも確かめるかのように、穏やかに。


「龍一郎さん、今話せるんだったら……私、聞きますよ」
「澄花……」


 一瞬、龍一郎は愛撫の手を止めたが、ため息を吐いて、「ありがとう」と、低い声でささやいた。


「まず、祖母の話をしようか」
「はい」
「祖母は……時々俺を、彼女の夫だった人と混同するんだ」
「夫……だった人?」


 澄花は首をかしげる。


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