お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「先輩」
「だって、話してくれないならもういいって車から降りるのも結構アレよね」


 思いこんだら突拍子もないことを口走ったり、行動するくせが澄花にはある。


「どうしよう……」


 いかりにまかせて飛び出してきたが、自分も自分で相当問題があるのではないかという気がしてきた。
 両手で頰をはさんで、息を飲んでいると、

「ふふっ……ふふふっ……」

 珠美がこらえきれないという風に笑いだす。


「先輩、表情がころころ変わって面白いです~」
「いや、タマちゃん。笑い事じゃないのよ」


 澄花は眉をハノ字にしながら目の前の珠美をうらめしく見つめる。

 そもそも澄花は恋愛経験が少ない。すぐに不安になってしまうのだ。


「はいはい、わかってますよ~。夫婦喧嘩は犬も食わないっていいますし。ってゆーか、先輩は夫婦っていうよりも、まだ恋人同士って感じで初々しいですけど」


 そして珠美はいつものように、スマホでテーブルの上のケーキをぱしゃりと撮ったあと、ぴこぴこと操作しながら問いかける。


「ちなみにエール化粧品の御曹司ってどんな人なんですかぁ~?」
「不二さん?」


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