お気の毒さま、今日から君は俺の妻
(私の不安は、全部ここから来るんだわ)
澄花はそう確信していた。
「ああ……そうだな。君も葛城になったわけだし、そのほうがいいだろう」
澄花の提案に龍一郎はうなずいた。
「はい、では、龍一郎さんとお呼びします」
第一関門を突破した澄花はホッと胸を撫でおろし、よく磨かれたスプーンを手にとって、生姜のソルベを口に運んだ。ジンジャーのさわやかな風味が口いっぱいに広がり、初めて味がはっきりとわかった気がした。
「あの――龍一郎さん。まだよろしいでしょうか」
スプーンを置いて、手を膝の上に乗せる。
「なんだ」
その改まった様子に、龍一郎がかすかに目を細める。
目じりの吊り上がった猫のような目に見つめられ、澄花は一瞬気圧されたが、必死に自分を励ました。
「あの――」
君が欲しいと言われた。
妻にと望まれた。
だが彼は言ったのだ。
『君が約束を守れば、私も約束を守る』
『そもそも君は私を愛する必要などない。ただ結婚さえしてくれたらいい』
『お気の毒としか言いようがないが、契約は契約だ』
『君の仕事は、私のそばにいること。ただそれだけだ』
と――。