お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(もしかして私、多額の保険金でも掛けられているのかしら……)


 まさかの発想だが、そのくらいしか澄花には彼が自分を妻にと望む理由がわからなかった。この一か月、そんなことばかり考えていた。

 だが保険金をいくらかけたところで、彼はそもそも大企業の御曹司で、澄花の願いをかなえるために、かなりの金額を動かしている。金目当てだとしたら本末転倒だ。それになにより龍一郎は『私は君を決して傷つけたりはしない』と、何度か口にしている。
 その言葉は信じられる気がした。


(葛城さん――龍一郎さんは、とりあえず約束は守ってくれる人だと思う……)


 だから澄花は、彼が自分に臨んでいることが仮に“人形の妻”だとしても、もう少し龍一郎に踏み込んでみたいと思ったのだ。


「あの、私、龍一郎さんのことを、これから少しずつ知りたいと思うのですが、迷惑でしょうか」
「私の事を?」


 しっかりと背筋を伸ばした澄花の、龍一郎に向けての発言に、龍一郎は不思議そうな顔をした。


「私の来歴なら、身上書を渡しただろう」
「それは確かにいただきましたが、そういうことではなくて……」


 結納の前に龍一郎からは身上書が提出された。

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