お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「ではなにが知りたい」
「あなた自身の事です」
「私自身?」
「なにが好きで、苦手で、どんなことが許せなくて、なにを大事にしているかとか……もっと、どんな人かを知りたいんです」
「俺のことなど、知ってどうする」


 その声はあまりにも冷ややかで、明確な拒絶の意志を感じた。
 だがここで引き下がってはもう二度と聞けない気がした。
 聞くなら夫婦になった今日なのだ。


(それに今、俺って言ったわ……)


 いつも私と自称する彼が、俺という時は少し特別な時だ。自分の言葉が彼のなにかを揺さぶったのかもしれない。だったらもっと揺さぶりたい。大きく。力強く。彼の本音を引き出してみたかった。


「知りたいと思うことは変ですか? 私たち、夫婦になったんでしょう?」


 たとえ契約結婚でも、龍一郎がなにを望んでいるのかわからなくても、これから先夫婦であるのなら――知りたかった。

 ガタン。

 その次の瞬間。龍一郎は持っていたワイングラスをテーブルの上に置いて、椅子からいきなり立ち上がった。
 驚いた澄花は龍一郎を見上げる。
 照明が逆光になって、彼がどんな表情をしているのかわからない。

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