この恋が実るなら
「お食事、行きませんか?」


ちょっと照れた様子で、でもちゃんとまっすぐ目を見て伝えてくれる吉川さん。


「ええ、もちろんそのつもりで来ました。

あ、でもその前に、ちょっとお買い物してもいいですか?
気に入ってたタイルの鍋敷きが割れちゃって、新しいの探したいんです。」


鍋敷きの事を思い出して、店内をキョロキョロ見回した。
今日の配置換えで、キッチンコーナーが移動したみたい。


「もちろん、いいですよ。キッチンコーナー、奥の角に移動したんです。ほら、本当の部屋みたいにディスプレイしてあるでしょう。」


そう言って、吉川さんはキッチンコーナーに向かって歩き出した。




北欧風に統一されたインテリアの中に、白ベースの色調で整えられたキッチン。


素敵…。
思わずうっとりする。


うちの賃貸のキッチンではこうセンス良くはいかない。
いつか、結婚して家を持った時にはこんなふうにしたいなぁ…


「このディスプレイ、今日陽子さんと僕で作ったんですけど、どうかな?

将来結婚したら、新居のキッチンはこんなふうだったら素敵だな〜と思ってディスプレイしたんだ。」


「えっ…!?」


まさか同じ事考えてたなんて…、とちょっと戸惑う。


「えぇ、とっても素敵ですね。」


ドキドキを悟られないように、にっこり笑顔で返して、私は鍋敷きを探す。
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