恋は盲目、愛は永遠
「出かける、んですか?」
「そうだ。この私と唯子の二人で」
「・・・え」
「ハネムーンに行こう」

このためにここ3週間ずっと仕事を押し詰めてきたと、鈴太郎さんはニコニコしながら私に言った。

「だからあまり唯子に構ってやれなくてすまなかった」
「いいえっ!そんな・・・」
「だが私は毎晩、唯子を抱きしめて眠っていたぞ」
「ぁ、そうですか・・・」
「なんだ?嬉しいのか?顔がほころんでいるぞ、唯子」
「やっ!そそ、それは・・・」
「こうして唯子を抱きしめなければ、私は眠れなくなってしまった」

鈴太郎さんの温もりを感じてホッとする反面、今夜は抱かれるのかもしれないと思うと体がこわばる。
それを察したのか、鈴太郎さんは私を抱きしめたまま、「明日の出発にそなえて、今夜はこのまま寝よう」と言ってくれた。
その途端、私の体から緊張が解けて、私は鈴太郎さんに身を預けるように眠っていた。

「おやすみ、私の唯子」と言った鈴太郎さんの低い声がかすかに聞こえた。
そして頭にそっと口づけされたような感触を、眠る前の最後に感じた。
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