一途な社長の溺愛シンデレラ

「お酒って、そういう飲み方もあるんだね」

 愚痴を言ったり、なにかを忘れたいためだけに飲むものではないらしい。

「そういう飲み方っていうか……まあいいか」

 私を見て優しげに眉を下げると、社長はフライパンを揺すってケチャップやらバターやらを放り込んだ。

 漂ってくる芳醇な香りに、またひとつ新しい世界を見つけたような気分になる。

 サラダをテーブルに運び、赤ワインに口をつけながらダウンライトに浮き上がるキッチン全体を眺めた。

 社長のいる世界に、少しだけ入り込めたかもしれない。そんなふうに思っていると、ふいにアルコール成分で溶けかかったイメージが頭に浮かんだ。

 砂漠に咲く、大量の白いバラだった。



< 260 / 302 >

この作品をシェア

pagetop