一途な社長の溺愛シンデレラ
頭の硬そうなお偉方が考えることを先回りして口に出し、制作会社に舐められないようにとわざと強くあたっていく。
先鋒の役目を課せられた彼も大変な立場だなと思っていると、大学生に毛の生えた若造と思われているに違いないうちの社長が、ざわつく会議室を一通り見回して、静かに言った。
「おっしゃるとおり、森林という言葉から、多くの方々は緑色を連想するでしょう」
「だったら、なぜこんな暗い色にしたんだ!」
課長のヒステリックな声を受け止め、社長はたっぷりと間をとってから口を開いた。
「我々が提案するデザイン案は、夜の森です」
ざわっと、また彼らがどよめいた。
立ち上がっていた課長が、呆気にとられたような顔で壁のイメージに目を向ける。
「夜の、森?」
「森林だから緑という発想はわかりやすく一般的です。だからこそ、ありきたりなイメージになり、他社の従来品との差別化が図りにくくなる」
整った顔に微笑を浮かべる社長の口調は自信たっぷりで、けれど押し付けがましくはなく、それでいて不思議な強さがあった。