今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「想像しかできないけど……。でもきっと……私の想像なんかじゃ足りないほどの、極限状態にあるんですよね」
琴は真剣な表情を浮かべ、きゅっと唇を噛んだ。
総士は「ああ」と相槌を打つ。
「敵軍と戦う兵士たちは、日の丸を背負って、大日本帝国軍を名乗り上げても、故郷に帰れば家族や友達……『国』なんて大きなものじゃなく、もっともっと、心から大切なものがたくさんある」
琴は声にする言葉を確かめながら、ゆっくりはっきり言って、両手を固く握り合わせた。
総士も彼女の手に視線を落とす。
彼の視界の中で、その手は小さくカタカタと震えていた。
二人が夕食を終えた頃、正一の件の対応を終えた忠臣が屋敷に帰ってきた。
総士の執務室で彼と並んで座り、忠臣の報告を聞き終えたのは、つい先ほどのことだ。
ソファに浅く腰を下ろし、向かい合った忠臣が、どこか沈鬱な面持ちで、『信じるかどうかは、奥方様と総士様にお任せしますが』と前置きをして口を開いた。
彼が語ったのは、琴と総士が上木呉服店を出た後、正一から聞いた戦場の真実だった。
二年前の欧羅巴の戦地で、正一は田舎から出て来た志願兵と組んで偵察に出た。
彼らはそこで、確かに地雷原の存在を確認したそうだ。
琴は真剣な表情を浮かべ、きゅっと唇を噛んだ。
総士は「ああ」と相槌を打つ。
「敵軍と戦う兵士たちは、日の丸を背負って、大日本帝国軍を名乗り上げても、故郷に帰れば家族や友達……『国』なんて大きなものじゃなく、もっともっと、心から大切なものがたくさんある」
琴は声にする言葉を確かめながら、ゆっくりはっきり言って、両手を固く握り合わせた。
総士も彼女の手に視線を落とす。
彼の視界の中で、その手は小さくカタカタと震えていた。
二人が夕食を終えた頃、正一の件の対応を終えた忠臣が屋敷に帰ってきた。
総士の執務室で彼と並んで座り、忠臣の報告を聞き終えたのは、つい先ほどのことだ。
ソファに浅く腰を下ろし、向かい合った忠臣が、どこか沈鬱な面持ちで、『信じるかどうかは、奥方様と総士様にお任せしますが』と前置きをして口を開いた。
彼が語ったのは、琴と総士が上木呉服店を出た後、正一から聞いた戦場の真実だった。
二年前の欧羅巴の戦地で、正一は田舎から出て来た志願兵と組んで偵察に出た。
彼らはそこで、確かに地雷原の存在を確認したそうだ。