今宵、エリート将校とかりそめの契りを
急いで軍営に戻り報告しようとしたが、途中敵の流れ弾に遭い、負傷してしまった。
正一よりも、共に被弾した志願兵の傷が重かった。
一人で立てない仲間を、敵陣営の篝火が見える場所に置いてはいけなかった。
一人先を急ぐことが正一にはできず、結果……先陣隊は出陣し、全軍壊滅された――。
「咎めを恐れて出奔した、志願兵の思いも。疑惑を持ちながら、正一さんに質さなかった同じ部隊の兵士たちの気持ちも」
そう言って琴は一度言葉を切り、わずかな間を置いて、ポツリと続けた。
「ずっとたった一人で、真実を隠さなければならなかった、正一さんの苦しみも……同じ人間が罰していいものではありません」
その思いも苦しみも、どれも壮絶で、戦場を知らない琴には測り知れない。
伏せた睫毛を震わせる琴を、総士は無言で抱き寄せた。
彼の肩に頭を預け、琴はそっと目を閉じる。
(きっと正一さんは、お兄様の部隊が壊滅された後、言おうとしたはずだわ。でも……それは許されなかった)
正一が報告できなかった為に、たくさんの仲間の命が戦地に散った。
彼の罪も悔いも、軍営の仲間には、口が裂けても聞かせてはいけない。
仲間に罪の片棒を担がせるわけにいかず、この二年の間、正一は真実を胸にしまい続けた。
正一よりも、共に被弾した志願兵の傷が重かった。
一人で立てない仲間を、敵陣営の篝火が見える場所に置いてはいけなかった。
一人先を急ぐことが正一にはできず、結果……先陣隊は出陣し、全軍壊滅された――。
「咎めを恐れて出奔した、志願兵の思いも。疑惑を持ちながら、正一さんに質さなかった同じ部隊の兵士たちの気持ちも」
そう言って琴は一度言葉を切り、わずかな間を置いて、ポツリと続けた。
「ずっとたった一人で、真実を隠さなければならなかった、正一さんの苦しみも……同じ人間が罰していいものではありません」
その思いも苦しみも、どれも壮絶で、戦場を知らない琴には測り知れない。
伏せた睫毛を震わせる琴を、総士は無言で抱き寄せた。
彼の肩に頭を預け、琴はそっと目を閉じる。
(きっと正一さんは、お兄様の部隊が壊滅された後、言おうとしたはずだわ。でも……それは許されなかった)
正一が報告できなかった為に、たくさんの仲間の命が戦地に散った。
彼の罪も悔いも、軍営の仲間には、口が裂けても聞かせてはいけない。
仲間に罪の片棒を担がせるわけにいかず、この二年の間、正一は真実を胸にしまい続けた。