今宵、エリート将校とかりそめの契りを
事実を共有した唯一の仲間がいなくなった軍営の中、たった一人で……。


琴は、正一の本心が、初めてわかったような気がした。
彼が琴に『好きだった』『お嫁さんに』と言ってくれた気持ちに、決して嘘はないだろう。


琴は思う。
本当は……真実をありのままに告白するつもりで、正一は琴を訪問したのではないだろうか。
誰かのせいではなく、ちゃんと『自分が報告できなかったせい』と告げる為に。


しかし彼が訪ねてきた時、琴は両親をも失っていた。
あの時琴は、家族を奪った戦争を、心の底から憎んでいた。
正一になにを言って泣いたか覚えていないが、そんな状態で彼の告白を冷静に聞けたとは思えない。
だからきっと、正一はここでも真実をのみ込むしかなかった。
顕清の戦死は、上官の総士による過誤のせいだと、琴に嘘を話してしまった……。


(本当は……抱え続けた真実を告解して、私に『許す』と言ってほしかったんじゃないのかな。なのに、私は……)


それが彼の悲痛な願いだと、勘づいた今。


「……私は正一さんの言葉を信じて、そして許します」


この言葉が、彼の罪の意識の解放になればいい――。


琴は噛みしめるように呟き、おずおずと総士を見上げた。
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