今宵、エリート将校とかりそめの契りを
目を上げると、鼻先が掠めそうなほど近くから、総士に瞳を射貫かれる。


「琴。礼はもういい。だから……」


総士は小さく声を消え入らせると、薄く目を閉じ、綺麗な顎を傾けた。
彼がなにをしようとしているかわかり、琴の胸がトクンと音を立てる。
応えようと目を閉じると、総士の唇が琴に触れた。


唇を食む、優しい口づけは、先ほどのような荒々しさはないのに、なぜか強く追い求められているようで、琴の身体はビクビクと震える。
角度を変えて何度も触れ合わせた後、総士が唇を離した。


頬を赤く染め、うっとりとした瞳を向ける琴に、彼は目を細めてフッと微笑む。
そんな視線にもドキッと鼓動を鳴らす琴に構わず、総士は唇を彼女の首筋に移動させていく。


「っ……あ」


ゾクゾクと甘い痺れが、全身に広がる。
琴の背筋を、突き上げるような戦慄が貫く。
堪らず喉を仰け反らせて声を漏らす琴に、総士が身を翻して覆い被さる。
彼の体重を全身で受け止め、琴は抗う余裕もなく、ベッドに押し倒されていた。


「だ、ダメ、総士さん」


胸が早鐘のように打ち鳴るのを感じながら、琴は必死に総士の胸に手を置いた。
わずかに押し返そうとする力を感じて、総士は眉間を曇らせ、彼女の横顔を見つめる。
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