今宵、エリート将校とかりそめの契りを
『ジッ』と音が出るかと思うほど見据えられ、全身が心臓になったように脈打つ。
総士は琴を見つめてわずかに眉間に皺を刻むと、左手を支えに身体を起こした。
ベッドがギシッと軋むのを聞いて、琴はそおっと総士に目線を上げた。
そして。


「っ」


恥ずかしさのあまり、反射的に視線を逸らす。
総士は琴の身体を跨いだ状態で、着物の肩を抜き、上半身裸になっていた。


先ほどは傷の手当てをするという理由があったから、なんとか目を逸らさずにいられたが、この後なにをされるか考えてしまうと、とても正視できない。


目を逸らし、プルプルと小刻みに震える琴を見下ろし、総士は一度小さな溜め息をついた。
「琴」と呼びながら、彼女の顎に手を添え、自分の方に視線を促す。


「激しくはしない。優しくゆっくりしてやるから、なにも心配するな。……怖がるな」


琴の不安だけでなく緊張もすべて受け止め、総士は低い声で静かに宥める。


「それでも、嫌か?」


至近距離から瞳の奥を射貫かれ、恥ずかしいのに目を逸らせない。
総士は唇を引き結び、黙っている。
琴に素直な答えを求め、願っているのが感じられる。
琴はゴクッと唾を飲み、目を伏せて首を横に振った。


「……嫌、じゃない、です」


自分でも、言わされているようだと思いながら、琴はボソボソと呟いた。
< 196 / 202 >

この作品をシェア

pagetop