今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「最初にしただろう? 約束」

「約束?」

「俺がお前に本気で惚れたら……命をくれてやると、俺は約束した」


探るような瞳に、琴はコクッと喉を鳴らした。
祝言の場に相応しくない質問に、大きく目を見開く。


「な、なにを言ってるんですか、総士さん。私は……」


確かに、二人の始まりはそんな約束だった。
しかし、もうそんなものが琴の願いではない。
それは総士もわかっているはずだ。


(なのに、なんでいきなり)


戸惑う琴を見遣り、総士は小さく声を漏らして笑う。


「もう、いらないか? 俺の命」

「だ、だから。こんな場でなにを……いらないに決まってます」


からかうような口調の総士に、琴はムキになってそう言い返した。
総士は静かに目を細める。


「そうか。それは残念」

「……総士さん」


まだ茶化す総士に、琴は無意識に眉をひそめる。
総士は小さく肩を揺らして笑いながら、「でも」と続けた。


「お前が欲しいと言う時には、いくらでもやるぞ。覚えておけ」


まるで言い聞かせるような言葉に、琴はそっと目線を上げた。
総士は琴の視線を感じているはずなのに、まっすぐ前を向いて淡々と呟く。
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