今宵、エリート将校とかりそめの契りを
忠臣がキビキビした口調で自論を展開するのを聞いて、総士も「ああ」と短い言葉で同意した。


「早乙女軍曹の部隊は壊滅された。発見したのは後追いの第二部隊。状況は推測しかできず、詳細不明……。東京の参謀本部にそう報告させたのは、俺だ」


総士は顎を撫でながら思考を巡らせた。


先陣の歩兵隊の、全軍壊滅。
確証はないが、進行経路に地雷原があったことは想像に難くない。
しかし、先触れの偵察隊から、総士はその報告を受けていない。
受けていれば、もちろん、経路変更を指示していたのだから。


「あの娘……いや、奥方様は、総士様が見殺しにしたと言ったのでしたな。言葉通りの意味ではなく、指揮を執っていた副官に向けた、ただの逆恨みと解してよいのでは?」


忠臣は、そう言って決着をつけようとする。


「両親が後を追い、天涯孤独の身となって一月足らずの今、誰かを恨みでもしなければ、真っすぐ立っているのもやっとの状態でしょう。そう考えれば、短絡的な行動も、理解の範囲内かと思いますが?」

「短絡的……か。だから解せない」


総士は逡巡しながら、大きく足を組み替えた。
床に着いた足を軸にして、ユラユラと椅子を揺らす。
しかしやはり納得できずに、椅子を軋ませて立ち上がった。
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