今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「琴は俺が見殺しにしたと信じ切って襲撃してきた。昨日一日で感じたが、琴は決して愚かな女ではない。その彼女が短絡的な行動をとるからには、確信に至るなにかを知っているということじゃないか?」


そう言って、総士は窓辺に歩を進めた。


格子ガラスの窓の外には、手入れの行き届いた西洋風の庭が広がっている。
庭は春ほど華やかではないが、弱いながらも、先ほど寝室に挿し込んだ朝日よりは、明るい光が降り注いでいる。
冬を迎えるこの時期、花開いているのはクレマチスやベゴニア、チューリップといった、冬咲きの品種の物だ。


「忠臣。副官の俺が知り得ぬ壊滅の詳細を、琴は誰かから聞いたということ。そうじゃないか?」


窓から庭を見つめながら、言葉を考えるように問いかける総士に、


「それならば、非常に物騒な話になりますな」


忠臣が静かに意見した。
それを聞いて、総士は無意識にカーテンを握りしめる。


「『お前の兄は、名取中尉が見殺しにしたせいで戦死した』と、誰かが奥方様を謀った。それが普段から交流があり、心を許せる人間だとしたら……奥方様も信用するでしょう」


黒縁眼鏡の向こうで目力を込める忠臣に、総士は黙って頷き返す。
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