今宵、エリート将校とかりそめの契りを
総士の部屋を出て、琴は家中歩き回ってみたが、女中頭は見つからなかった。
もしかしたら、今日は休みなのかもしれない。
そう考えながらも、最後に玄関から外に出てみた。
そして、そこに広がる優美な庭園に、琴は思わずほおっと感嘆の声を漏らした。
昨日は庭を眺める余裕もなかったが、海外の文学作品の舞台になりそうな西洋風の庭園は圧巻だった。
十一月というこの時期、花壇を彩る花の種類は少ないが、門に近い一角に冬咲きのバラが見える。
きっと、庭師が優秀なのだろう。
琴は引き寄せられるように、門の方へ歩いて行った。
「うわあ……素敵」
琴は声をあげ、花壇の前にしゃがみ込んだ。
花の高さに目線を合わせると、甘く芳醇なバラの香りが鼻先をくすぐる。
琴はそっと目を閉じ、その芳しい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
あまりの心地よさに、無意識に口元を綻ばせてしまう。
しかし、笑っている自分を意識して、琴はハッとして笑みを引っ込めた。
(花くらいで、私ったら)
今自分がどんな状況下にあるか。
この先自分がどうなるか。
なにをどう考えても、琴の前に続くのは、このバラの棘より険しい茨の道。
だと言うのに笑えるなんて、呑気なものだ。
もしかしたら、今日は休みなのかもしれない。
そう考えながらも、最後に玄関から外に出てみた。
そして、そこに広がる優美な庭園に、琴は思わずほおっと感嘆の声を漏らした。
昨日は庭を眺める余裕もなかったが、海外の文学作品の舞台になりそうな西洋風の庭園は圧巻だった。
十一月というこの時期、花壇を彩る花の種類は少ないが、門に近い一角に冬咲きのバラが見える。
きっと、庭師が優秀なのだろう。
琴は引き寄せられるように、門の方へ歩いて行った。
「うわあ……素敵」
琴は声をあげ、花壇の前にしゃがみ込んだ。
花の高さに目線を合わせると、甘く芳醇なバラの香りが鼻先をくすぐる。
琴はそっと目を閉じ、その芳しい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
あまりの心地よさに、無意識に口元を綻ばせてしまう。
しかし、笑っている自分を意識して、琴はハッとして笑みを引っ込めた。
(花くらいで、私ったら)
今自分がどんな状況下にあるか。
この先自分がどうなるか。
なにをどう考えても、琴の前に続くのは、このバラの棘より険しい茨の道。
だと言うのに笑えるなんて、呑気なものだ。