今宵、エリート将校とかりそめの契りを
しかも事が済んだ後はまるで泥のように眠ってしまい、朝になって総士がベッドから出て行ったのも気付かない始末。
油断して隙を晒したのは、完全に琴の方だった。


「で、でも! 昨夜は……あんなの初めてだったからっ」


思い出せば思い出すだけ悔しくて、ただ恥ずかしい。
琴は思いっ切り声を張り上げ、自分を鼓舞した。


(そうよ、慣れれば私だって。……って、慣れれば?)


自分の心の声に追い込まれ、琴はさらに不安になる。
確かに回数を重ねれば、少しは余裕が持てるようになるだろう。
しかしその為には、総士に抱かれることが日常にならなければいけない。


「無理……かも……」


自信などあるわけがない。
周りに誰もいないこともあり、琴は心の底から気弱な独り言を漏らし、お腹の底から深い溜め息をついた。
その時。


「……琴っ、琴……!?」


周りを憚るように潜めた、それでいて鋭い声で呼ばれて、琴はギクッと身を竦ませた。
それでもすぐに、その聞き覚えのある声に反応して、ハッとして振り返る。


「琴っ! よかった、無事だった……!」


門柱の陰に隠れるように佇んでいたのは、昨日琴が纏っていたのと同じ、制服姿の女学生だった。
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