今宵、エリート将校とかりそめの契りを
陸軍省に到着した総士は、外套の埃を払う間もなく、上官である第三師団隊長・山本中将の執務室に呼ばれた。
そこで三十分たっぷりと、昨日のパレード離脱の小言を食らい、その後は午前中いっぱい始末書作成に追われた。
昼時を告げる食事ラッパの音を聞いて本部内の食堂に行き、ようやく一息ついた。


陸軍での兵食は、階級に関わらず基本的には全員同じ物が提供される。
戦地にいる間は野戦糧食という乾パンや缶詰、乾燥食品といった味気ない物になるが、陸軍省の食堂の兵食は、一般国民の食卓に比べてかなり豪華だ。


戦争の最前線で戦う兵士の体力、健康事情を、存分に配慮したものだ。
今日の献立も米飯にけんちん汁、ポークカツレツに菜浸しに漬物、甘味の羊羹までついた、至極立派な物だった。


士官学校の同期と顔を合わせて、一緒にテーブルを囲む。
平時だというのに、見知った顔が少ないのは、世界戦争が終わっても、シベリアに出兵した兵士が未だ駐屯しているせいだ。
テーブルでの話題も、勝利を治めた世界戦争ではなく、次にシベリアに派遣される師団への憶測が主だった。
< 70 / 202 >

この作品をシェア

pagetop