今宵、エリート将校とかりそめの契りを
午後の職務を終え、帰り間際にまたしても山本中将から呼び出しを受けた。
この時間の呼び出しは、たいてい総士への縁談話になる。
しかし今日は、総士も話を長引かせることなく、正統な理由をつけて一言で断ることができた。
「妻を娶りました」
突然の総士の結婚報告に上官も目を剥いたが、それが昨日の捕り物騒ぎで捕らえた琴だとは言わず、当たり障りなく交わした。
最後には山本中将も総士に祝辞を述べ、『これを奥方に』と、ブリキ缶に入ったミルクキャラメルをくれた。
総士はわずかに苦笑して、「ありがとうございます」と言って受け取った。
総士が欧羅巴の戦地に赴く前から売られていた甘味だが、一般的にはまだまだ高価な物だ。
恐らく琴は食したことがないだろう。
総士はブリキ缶を懐に収め、上官に暇を告げた。
帰宅した総士を玄関先まで出迎えた忠臣に、外套を預けながら琴の様子を訊ねた。
「食欲がないようで、本日は朝からなにも召し上がっておりません」
事務的な忠臣の報告を聞いて、総士は眉を曇らせる。
「昼時に庭園に出ておりました。女学校の友人が来ていたようで、門越しに会話しているところを発見して、連れ戻しました。抵抗なく自室にお戻りになり、その後、部屋で過ごされています」
「……そうか、ご苦労」
短くそう言って、総士は彼を下がらせた。
食事をとっていないというのが気になったが、大方は想定内だった。
この時間の呼び出しは、たいてい総士への縁談話になる。
しかし今日は、総士も話を長引かせることなく、正統な理由をつけて一言で断ることができた。
「妻を娶りました」
突然の総士の結婚報告に上官も目を剥いたが、それが昨日の捕り物騒ぎで捕らえた琴だとは言わず、当たり障りなく交わした。
最後には山本中将も総士に祝辞を述べ、『これを奥方に』と、ブリキ缶に入ったミルクキャラメルをくれた。
総士はわずかに苦笑して、「ありがとうございます」と言って受け取った。
総士が欧羅巴の戦地に赴く前から売られていた甘味だが、一般的にはまだまだ高価な物だ。
恐らく琴は食したことがないだろう。
総士はブリキ缶を懐に収め、上官に暇を告げた。
帰宅した総士を玄関先まで出迎えた忠臣に、外套を預けながら琴の様子を訊ねた。
「食欲がないようで、本日は朝からなにも召し上がっておりません」
事務的な忠臣の報告を聞いて、総士は眉を曇らせる。
「昼時に庭園に出ておりました。女学校の友人が来ていたようで、門越しに会話しているところを発見して、連れ戻しました。抵抗なく自室にお戻りになり、その後、部屋で過ごされています」
「……そうか、ご苦労」
短くそう言って、総士は彼を下がらせた。
食事をとっていないというのが気になったが、大方は想定内だった。