共同生活
玄関の鍵を開けるとそこは旅館の広間のようなっていた。


正面には螺旋状の階段があり、二階へと繋がっているようだった。


靴を脱ぐと、彼女は俺の手を引きながら階段を上がって行く。


二階には右と左に一つずつ部屋があり、彼女に左側の部屋へ連れて行かれた。家はでかいのに部屋数は少ないようだ。


「ここが私の部屋なんです、汚い所ですけど...どうぞ」


汚い?どこが?と思うほどキレイに整えられた部屋に入ると、彼女のつけている物と同じ甘い香水の匂いがした。


そこらじゅうにクマやネコ等のぬいぐるみがあるのが女の子の部屋だなと妙に意識させられて緊張する。


「ちょっと座ってて下さいね!」

と言って慌てた様子で彼女はドアを開けたまま出ていってしまう。


一人残された俺はあらためて部屋を見回した。


タンスの上の写真立てには、今よりも若干幼い高校の制服を着た彼女と、恐らく両親であろうおじさんとおばさんが笑顔で写っていた。
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