無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「デートなんじゃないかな。だってクリスマスだし」

 あちこちのテーブルでふたりの世界を創りだしている男女をぼんやり眺めながら、私はメイン料理の牛ホホ肉のワイン煮込みに口をつける。

 舌の上でほどけていく牛肉の味わい……最高においしい! 

 周囲がカップルだらけだろうと、大切な友人といっしょにおいしい料理を食べれば、クリスマスなんていう行事のせいで募りかけた寂しさも、全部吹っ飛んでしまう。

「冴島部長って本当に恐いよね。目つきのせいかな。顔はトップスリーのなかで一番好みなのになぁ」

 ワイングラスをくるくる回しながら言ったあと、真凛は考え込むように目線を上げた。

「部長の彼女ってどんな人なんだろう。あの鬼部長と一緒にいられるって、すごくない?」

 遠くの席に座る別の部署の子にまで鬼部長なんて呼ばれてしまう冴島さんを少し不憫に思いつつ、私はうなずく。

 たしかに、冴島部長のプライベートはまったく想像がつかない。

「やっぱり付き合うならやさしい人がいいわ。いくら顔がよくても、怒られてばっかじゃ愛も冷めそうだし」

 苦い顔で言ってから真凛は笑った。

「私、何様って感じね」
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