無慈悲な部長に甘く求愛されてます
♡
ふと気づくと、フロアから人の気配が消えていた。
「あれ」
ついさっきまで残業組がいたのに、と思いながら時計を見ると、午後十時を回ったところだ。
ふいに力が抜けて、私は仰け反るように椅子にもたれた。
悲鳴をあげるように背もたれがきしむ。
「うう、つかれたあ……」
伸びをして肩をまわすと、体がごりりと不穏な音を立てる。
一心不乱にキーを打っていたせいで腕の筋も張っていた。
「甘いものが食べたい……」
空腹のピークはとっくに超えて食事への欲求は消えたけれど、口が糖分を欲している。
できればフルーヴの濃厚なクリームがいいと、私に訴えかけてくる。
とはいえ、お店はとっくに閉まっているから、帰りに買うこともできない。
そもそも、私は今日、家に帰れるのだろうか。
まだ半分残っている書類の束を見つめて、ため息がこぼれた。