無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 会社の人たちのことを、私はきっとそんなに知らないのだろうなと改めて思う。

 私がそうであるように、会社と家とでは別人みたいな人もいるだろうし。

 もしかすると、冴島部長にだって鬼と呼ばれる姿とは違った一面があるかもしれない。

 そんな話や社内の噂話、それからお互いの近況を話しているうちに、時間はあっというまに過ぎていった。

 最後のデザートを平らげて会計を済ませると午後十時過ぎ。

 店を出て地下鉄の階段を下りたところで真凛が右手を上げた。ここから先は別々の方向だ。

「じゃあ、また明日」

 お酒を飲んでいるあいだはどことなく緩んでいた表情が、冷気にさらされたとたん、きりりとした普段の顔に戻っている。

 真凛の緩んだ表情も、会社で見る彼女とは違う一面だなと思った。
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