無慈悲な部長に甘く求愛されてます
ロッカーから取り出したコートを腕に抱え、冴島部長の目を見ないまま頭を下げる。
「本当にありがとうございました。ケーキもごちそうさまです。おつかれさまでした」
小走りでフロアを突っ切りドアに手を掛けようとしたところで、後ろから腕をつかまれた。
「おい、待てって。心配しなくても、このあいだみたいに襲いかかったりしない――」
触られた腕に意識が集中して、頭が真っ白になる。
「離してください!」
足元にコートが落ちた。
はっとして見ると、冴島さんが目を見張っている。
彼の手を思い切り振り払ってしまったことに気づき、私は自分の腕を抱いて目線を下げた。
「すみません、私……」
絨毯に落ちたコートを拾い上げて、冴島さんが私に差し出す。
それはいつか彼に買ってもらったカシミヤの白いコートだった。
「あの……」
私の頭を、彼の手がぽんと優しくたたく。
「冴島、さん?」
「怖がらせて、すまなかった」
小さくつぶやいて、部長は私の横をすり抜け、ドアの外に出ていった。