無慈悲な部長に甘く求愛されてます
すべての作業が終わったのは、夜の十一時を過ぎたころだった。
「終わったあ……」
エンターキーを押したとたん泣きそうな声が出てしまい、はっとする。
「冴島さん、ありがとうございました!」
振り向くと、部長は片手で頬杖をついて私を見ていた。
ふっと崩れた表情に、思い出したように胸が高鳴る。
私は急いで目を逸らした。
すっかり忘れていたけれど、今、私は冴島さんとオフィスにふたりきりなのだ。
意識したとたん、ありえないほど心臓が反応した。
痛いくらいの鼓動に、背中を丸める。
「おつかれさん。車で来てるから家まで送ろう。そのケーキは帰ってから食べるといい」
立ち上がってノートパソコンを片付ける彼に、私は首を振った。
「だ、大丈夫です」
「いや、もうこんな時間だし。ついでだから乗っていきなさい」
「いえ、まだ電車もありますし。本当に大丈夫ですから」
私は急いでパソコンの電源を落とし、帰り支度をするために立ち上がった。