無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「けど、君はここ最近、俺を避けていただろう。さっきも、俺に触られたのが嫌だったから……」

 私は首を振った。大きく左右に、髪が乱れるのも構わずに。

 胸に溜まっていた塊が、喉を圧迫して苦しかった。

「冴島さんの、せいです」

 涙がひとすじ頬を伝った。

 押し込めていた感情と一緒に、ぼろぼろとあふれ出す。

 我慢しきれずに、私は部長に飛びついてコートの胸を力任せに叩いた。

「お、おい」

「全部、冴島さんが悪いんです!」

 肩をつかまれても、いやいやをするように首を振って、私は叫び続けた。

「冴島さんが、あんなキスするから!」

 広い胸にしがみついたまま、ぎゅっと目をつぶった。

「頭の中が冴島さんばっかりになっちゃって、全然仕事に身が入らなくて、本当に、困ってるんです!」

 どこかの階で呼ばれたのか、エレベーターが動き出す音がする。遠くでポーンと音がしたあと、あたりは静まり返った。

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