無慈悲な部長に甘く求愛されてます



 立体駐車場に車を停めた冴島さんに連れてこられたのは、夜空に突き立つ高層ビルだった。

 エントランスドアの上には、まるでおしゃれなカフェの入口みたいに『ブルーレジデンス』と書かれたアルファベットの文字が並んでいる。

「あの、ここは……商業ビルというか……ホテル、ですか?」

 自動ドアをくぐって、私は立ち尽くした。

 冴島さんは私の背中を押すようにして間接照明に照らされた雰囲気たっぷりのロビーを通り抜け、慣れた様子でエレベーターに乗り込む。

「いや、マンションだよ」

 私は絶句する。自分が住んでいるアパートとは違いすぎてめまいがしそうだった。

「次元がちがう……」

 私のつぶやきが聞こえたのか、冴島さんが苦笑する。

「そうでもない。ここは昼間しかコンシェルジュがいないし、駐車場も外に借りてるしね」

「コンシェルジュ……?」

 聞きなれない言葉を繰り返して、私は自分の匂いが染み付いた木造三階建てのアパートを思い出した。

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