無慈悲な部長に甘く求愛されてます
エバーハイツ303。大学生の頃から住んでいる築三十年のほんの少し古ぼけた部屋だ。
彼も私の部屋を思い浮かべたのか、ためらうように言った。
「小松さんは、引っ越さないのか?」
一瞬考えて、私は首を振った。
社会人になって、もっと条件のいい部屋に住めるだけの余裕は生まれたけれど、節約生活が染み付いていたし、特に不便もないから引っ越す気なんてまったく起きなかった。
そう説明すると、彼はこころなし渋い表情になる。
「せめてオートロック付きの部屋にしたほうがいいと思うが」
ほんの少し不機嫌そうな声に、ふと思う。
もしかして、心配してくれてる?
エレベーターを降りてホテルみたいな内廊下を進み、1503と書かれた部屋までくると鍵の操作もせずにドアノブに手をかけ、冴島さんは玄関を開いた。
「どうぞ、入って」
ワンタッチ開錠の玄関ドアなんてはじめて見た。
驚いて立ち尽くす私をしばらく無言で眺めていた冴島さんは、やがて焦れたように私の手を引っ張った。