無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「私、会社とプライベートをきっちり分けちゃってるから、会社関係の人は恋愛対象として見てないのかも」

 ワインをオーダーしながら、真凛は目をぱちくりさせる。

「そうなの?」

「うん。よっぽど運命的な出来事でもない限り、会社の人を好きにはならないんじゃないかなあ」

 なにせ仕事のことを考えるだけで頭がいっぱいになってしまうのだから。

「なんだかもったいないような気もするわ。うちの会社、社長を筆頭にイケメンが多いのに」

 そこまで言ってから真凛は急に笑い出した。

「社長っていえば、今日の差し入れのケーキ!」

 トナカイの形をしたカップケーキを思い出して、私もつい笑ってしまう。

「社長のキャラじゃなさ過ぎて、笑いこらえるの大変だったわ。あのクールな社長が、どんな顔であんな可愛らしいケーキを選んだのかしら」

 よっぽど笑いのツボに入ったのか、真凛はフォークとナイフを置き、テーブルに肘をついて肩を震わせる。

 差し入れのケーキはトナカイのみならず、クリスマスツリーやサンタクロースを象ったものもあり、そのすべてが社長が買ったとは思えないようなラブリーなデザインだった。

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