ブラックサンタクロース


「会場に入るときの手荷物検査及び身体チェックは念入りにすることになったので、刃物や爆発物を持ち込むのは不可能っス」


そんなことしても無意味だ。

Xは武器なんてなくても戦える。


きっとあからさまな危険物は持ち込まない。


むしろ、見るからに安全そうなフリして近寄ってくるのではないか。


無防備で。弱々しい。


子供、あるいは、老人。それから――。


「ああ、俺手伝いますよ」


上原が、視界に捉えた車椅子の女性に手を貸す。

段差が乗り越え辛かったようだ。


一瞬警戒したが、あれは、人間だ。

彼女がXではないと香りが告げている。


あんな風に、Xは、ハンディキャップを抱えたフリして会場入を目論む可能性がある。誰もを疑うべきだ。


「ありがとう、お兄さん」

「いえいえ。このくらい、いくらでも」


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