悲劇のヒロインなんかじゃない。
「それは、だけど、でも…」


そんな事を言いながらでも彼のスーツを掴んで離さない彼女に怒りは頂点へと達した。


「あれかしら?妻にはなれないけれど、青嶋さんが愛しているのは自分だ、と優越感にでも浸ってるの?愛されない私を可哀想だとでも思ってるのかしら?」


「薫さん!佐知はそんな事っ!」


青嶋さんが止めようと言葉を発したが私は止まらない。


「私という『悪者の婚約者』が自分たちの愛を邪魔をしている。そう思っているのでしょう?身を引きますだなんて本当には思っていないくせに。青嶋さんに引き留められるのを当たり前だと待っているくせに!」


「薫さん!」


青嶋さんが震える彼女を抱きしめながら私を睨んでいる。


「二人とも自分たちに酔っているだけじゃない。悲劇のヒロインはあなたじゃない。」


だってあなたは愛されてるじゃない。


私が愛を求めていた愛しい人に。


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