溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「――絨毯の部分メンテナンスですね。予算等含め、上長に相談しておきます」
「お客様の目に入る場所なので、なるべく早い対応を願います」
「はい。かしこまりました」
ショールームには、予約して来館している企業の方や、興味を持って訪れている一般の方が入り混じっている。
担当者からの要望を手帳に書き纏めて、明日すぐに対応することにした。
就職する前、私も何度も来たことのあるショールームは、何年経っても綺麗だ。
建物自体がデザイン賞を受賞した過去があって、文具目当てではない方の姿も、時々見受ける。外観を眺め、ショールームに背を向け、最寄駅へ向かう。
「えっ……嘘っ!!」
駅までまだ少し距離があるのに突然の雷雨に見舞われ、小脇にバッグを抱えながら、近くのコンビニへ駆けこんだ。
数秒間ですっかり濡れてしまった髪や服をタオルハンカチで拭いつつ、バッグの中を探る。
だけど、今日に限って折り畳み傘を自宅に置いてきたらしく、仕方なくビニール傘を買うことにした。