溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 ゲリラ豪雨の影響で、店内は客でひしめき合っている。
 陳列棚の間にできた客列に並ぶこと数分。途中に置かれているラックの前にようやく辿り着いた。

 だけど、ビニール傘に伸ばしかけた手が止まる。
 私の二人前に並んでいる男性客の分が最後で、売り切れてしまったようだ。


 ついてないなぁ。止むまでここで時間を潰すしかないのかな。
 立ち読みは店から嫌がられるし、イートインコーナーもないから長居はできなさそうだけど。


 叩きつけるように降っている雨の様子に視線を移したら、目の前の歩道を歩く男性の姿があった。
 こんな悪天候でも、佇まいが綺麗で思わず目が奪われたのも束の間、傘の下から一瞬見えたその横顔は、間違いなく八神さんで。


「待ってください!」

 さっきまではどうやってこの雨を凌ごうかと考えていたのに、そんなことは一瞬で忘れて、私の身体は勝手に店を飛び出し、彼に駆け寄っていた。


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