溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「……これ、私?」
「とっても綺麗なお嬢さんでしょう? この着物は八神ブランドのものだから仕立てもいいし。さぁ、自信を持って行ってらっしゃい」
料金の清算は、社が先に済ませていたようで、着付け師とヘアメイクをしてくれた美容師に見送られて店を出た。
慣れない足袋と草履の足元は、自然と歩幅が狭くなる。
それに、着物を着ただけで背筋がシャンと伸び、いつもより視界が広く感じた。
通りすがりの見知らぬ年配の女性にも「素敵ね」と褒められて気分がいい。
自信の欠片もなかったのに、綺麗に着飾っただけでこんなに人の視線を集められるのが不思議なくらいだ。
社が八神ブランドの訪問着を用意したのも、計算のうちなんだろうな。
遠くないうちに、どんな契約が締結されたのか、書類を探し当てようと決めた。