溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ラウンジの受付で人事部の男性が社名を告げると、すぐに個室へ通された。
「お疲れ様です。お連れしました」
「三藤さん、今日はよろしく頼みますね。それにしても素敵ですね……きっとお相手も喜ばれるでしょう」
普段目にかかることもないStationiaの会長は、白髪が上品な紳士だ。ここまで連れてきてくれた人事部の男性は何も言わなかったけれど、会長は私の着物姿を褒めてくれた。
「さすが八神の着物ですね」
「そうだな。女性を美しく見せる着物は他にないと、私も思っているよ」
専務は私より着物の美しさにばかり注目しているけれど、いつもの私を一度見ているだけに仕方ないとも思える。
とはいえ、二人が話しているのを横目に、私は少しだけホッとしていた。
お見合いといえば、和室で長時間の正座を強いられるイメージだったけれど、木を基調にした上質で落ち着いた内装に、モダンな六人掛けのソファ席が設けられ、大きな窓から差し込む明るい光に溢れた空間が広がっていたからだ。