溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「こんにちは。八神 一誠と申します」
「三藤 咲と申します。本日は素敵なお話をいただき、大変光栄でございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「弊社の訪問着をお召しになられているんですね。とてもよくお似合いですよ」
「ありがとうございます。私にはもったいないくらいの素敵なもので、緊張しております……」

 彼は丁寧に挨拶をしつつ、私の着物にもぬかりなく目を光らせていたようだ。

 お見合いの席ということもあり、花火大会の時よりも、品格を感じるスーツ姿に見とれてしまいそうになる。だけど、昨夜の光景がまざまざと浮かび、ドキドキと鳴る鼓動に冷静を促した。

 どんなに紳士的な彼の対応も薄っぺらく感じる。
 はじめまして、と挨拶しなかったのも彼なりの計算や意地悪なのかと、疑ってしまった。

 とはいえ、この縁談の席を穏便に済ませるのが、今日の私の任務。
 昨夜、ネットで結婚相談所のサイトにアクセスし、どんな挨拶や会話がいいのか調べたことを必死で思い出そうとした。


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