生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
 時間ですよと声をかけられて、テオドールはリーリエをエスコートする。
 その手を取りながらリーリエは、テオドールを見つめ、

「ねぇ、テオ。あなたは今幸せですか?」

 自分の破滅エンド回避のために筋書きを変えたこの世界で、一番幸せであって欲しい人に尋ねる。

「そうだな。朝起きて挨拶を交わしたり、一緒に食事をしたり、今日あった事を話したり、たまに喧嘩をしたり、仲直りをしたりを繰り返しながら、リィが色々やらかす様を特等席で見れる毎日は、何にも代え難い。そんな日常を幸せと呼ぶのなら、俺はきっと今幸せなんだろう」

 テオドールの答えに満足そうに頷いたリーリエは、リィは? と問われゆっくり歩きながら言葉を紡ぐ。

「私も同じです。そしてこれから先もあなたと送るそんな平穏な毎日を所望します」

 まぁ、人数増える予定だけどというのは言葉にせず内心にとどめておく。
 ああ、そうだ、言ってなかったとテオドールは思い出したようにリーリエの耳元で、

「俺の妻はいつも可愛いくて綺麗だが、今日はいつも以上に美しいな。ドレス似合ってる」

 そう囁いて、綺麗に笑う。

「……ファンサが過ぎる」

 完全に油断していたリーリエは最愛の推しの急なデレに完全にやられ、耳まで赤くした状態で入場するハメになった。


 昔々あるところにカナン王国とアルカナ王国という大陸続きの2つの国があった。
 その2つの国はある時期からそれはそれは友好的にお互い支え合って発展していった。
 そんな歴史の発展に大きく貢献したアルカナ王国の賢王ルイス・ミカリエ・アルカナの名は末代まで響き、その彼を支えて国の剣となった王弟殿下の存在も併せて伝えられている。
 珍しい容姿をしていた王弟殿下の逸話はいくつも残っているが、愛妻家として有名で彼の傍らにはいつも楽しそうに笑う翡翠色の瞳をした魔術師の妻の存在があったという。
 その魔術師はその生涯をかけて夫から言われた"好きにしろ"を拡大解釈しまくり、いつも楽しそうに無双して、夫を振り回し続け、そんな彼女を見て彼は幸せそうに笑っていたと伝えられている。
 これは、かつて生贄姫と死神と呼ばれた、そんな2人の平凡でありふれた幸せに満ちた生涯の物語である。

ーFinー

あとがき。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
期日未定で番外編とかちょこっとアップしようかなーと計画してますので、良ければそちらもぜひご覧ください。
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