生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
 テオドールはふっと笑い、唇に当てられていたリーリエの手に自身の手を重ねて外すと、リーリエの手の平にキスを落とした。

「リーリエがそう望むなら、追求することも口外する事もしない」

 そう言いながらテオドールはリーリエの手にキスを落としていく。

「ただ、今後は自身の命をかけるリスクを冒してまで秘密主義を貫くのはやめて欲しい。まだ俺の妻でいることを望むなら」

 手の甲、指先に丁寧に唇を這わせ、指先を甘噛みする。
 されるがままにぼんやりと見ていたリーリエは指先にテオドールの舌が絡みついた所で、正気に戻り、手を振り払った。

「ーー〜〜って、何してますの! 旦那さまっ!!」

 今されていた事を思い出し、耳まで真っ赤になったリーリエは、先程テオドールに噛まれた指先をもう片方の手で押さえて、口をぱくぱくさせながら叫ぶ。

「何、ってそう言う状況かと」

「そう言う状況って何ですの!?」

 真っ赤になったまま、パニック状態になっているリーリエに、テオドールは諭すように話す。

「リーリエ、冷静に今の状況を見てみろ。まぁ、俺としてはやぶさかではない。たまには見下ろされるのも悪くないしな」

 そう言われてリーリエは自身の今の状態を冷静に振り返る。
 薄暗い部屋に結婚している男女が1つのベッドの上にいて、しかも妻が夫を押し倒しているこの状況。

「………っ〜〜/////」

「正気に戻ったようで何よりだ。で、俺はいつまで素直に押し倒されていればいい? それともこのまま続けた方がいいのか?」

 完全に固まってしまったリーリエに仕方ないと上半身を起こしたテオドールは、

「選択肢を与える。このまま続けるか、話し合いをするか、俺はどちらでも構わない」

 と付け足し、リーリエの髪を掬って口付けた。

「は、話し合いっ! 話し合いましょう!! 話せば分かる。今すぐ、話し合いでお願いします」

 リーリエは両手を上げて降参のポーズを示し、全力で話し合いを希望した。
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