浅葱色の魁
なぁ 陽乃

お前は、徳川の隠密か?


俺を見張る、密偵なのか?




もしも、そう訊ねたら




陽乃は、きっと
用意していた言葉を言うんだろう





人が、咄嗟についた嘘は
いずれバレる





だから、あらかじめ嘘を用意しなければ
いけない


嘘を重ねない為に


1つの嘘に疑いを持たれてはいけない




完璧に嘘をつかなければならない








陽乃は、俺にそう教えた









まるで、自分の嘘を暴かないでくれ








そう、訴えているみたいに














だから
俺は、陽乃を信じる






皆に女だと言えないつらさ


きっと



陽乃も俺に言えなくて、辛いはず





陽乃にも守るものがあるはず
大切な家族や仲間がいるはず






いつか、陽乃が徳川に俺のことを報告したならば、今度は俺が陽乃の為に


嘘でも笑って、徳川に落ちよう

完璧に陽乃を騙してやろう




だけど、許して欲しい




藤堂平助でなくなるとき

それは、俺の命が尽きるとき










今は、知らないふりをするよ


陽乃…



君は、安斐兄からの命を受け

俺を守ってくれている




俺は、そう思い続ける














< 39 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop