Miseria ~幸せな悲劇~

「詩依は喰イ喰イって知ってる?」


祐希が言った。


「ああ、あの不幸を食べてくれるってやつ?」


「そうそれ」


「祐希は信じてるんだよ。割りとマジで」


メイは詩依に微笑んだ。その表情には詩依ならおまじないの類いは一笑に付すだろうという意味合いもあった。


メイの言葉に、祐希は少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。


「へぇ、ま、うちの学校じゃあけっこう有名よね、喰イ喰イ…」


詩依は頬杖をつきながら言った。


凪瀬校のトラブルメーカーと名高い詩依は当然のように校内の色々な情報を仕入れていた。


「てけてけや口裂け女みたいに全国的に知られている幽霊や都市伝説とは違うのよね。どうも凪瀬校の生徒しか知らないみたいよ」


詩依は大量に積まれたお菓子の中から好みのものがないか物色しながら言った。


「へぇ、じゃあ、凪瀬の生徒の誰かが最初に言い出したってことだよね」


メイは詩依に言った。


「さぁ、でも喰イ喰イの噂は何十年も前からあるらしいわよ。多分、凪瀬ができたころに誰かが考えたのか、もしくは本物かもって感じね」


そう言って詩依は美味しそうに桃のゼリーを食べていた。


「やっぱり喰イ喰イって本当にいるのかな?」


祐希はまじまじとした表情で言った。


「まさか…」


そう言いつつも、メイは詩依の性格を考えて、喰イ喰イのおまじないをただの迷信と否定しなかったことが意外であった。


それほどこのおまじないには何か『本当にあるのかも』と思わせる力があるのだろうか?
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