お見合い結婚狂騒曲
「ーー悪かった。心配を掛けたみたいだな」

葛城圭介の腕がソッと私の背中に回り、胸に私を抱き寄せる。

素直な葛城圭介なんて、怖い! 気持ち悪い! と思いつつ、でも……トクトクと聞こえる心臓の音に、彼が生きていると実感が湧き、ポロポロと涙が頬を伝う。

ーーどうしよう。止めようにも止まらない涙を自分でも持て余していると、ポンポンと背中を叩いていた葛城圭介が、「タイムリミットみたいだ」と言う。

何のことかと顔を上げると、「ギャラリーをこれ以上増やすと、病院から出入り禁止令が出る」と言う。

ゆっくり辺りを見回すと……何! 警備員や看護師が行く手を塞いでいるが、明らかにマスコミと思しき人々とカメラが数台見えた。

「ということだから、ラブシーンの続きは後でごゆっくり。行くよ!」

真斗さんが掛け声と共に走り出す。その後を葛城圭介が続き、手を繋がれた私も引き摺られて行く。

真斗さんは車に乗り込むと、すぐにエンジンを掛け発車する。
二度と乗りたくなかったのに……。

「こりゃあ、明日の朝刊は、えらい騒ぎだぜ」

バックミラーを見ながら真斗さんがニヤリと笑う。

「おそらくな」

葛城圭介も実に楽しそうだ。
嘘でしょう。アンドロイドが人間になった。
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