お見合い結婚狂騒曲

「ーー圭介君、大丈夫ですか？　やっぱり打ち所が悪かったとか……」

先程までの怒りも涙も一気に消え失せ、病人と幼児と老人には至って優しい私は声を和らげ訊く。

「どんな風に報道されたか知らないが、大袈裟なんだよ。頭の傷も大したことはない」

それならいいが……とホッとする。

「意外だったな。それほど心配してくれるとは思ってもいなかった」

彼の大きな手が私の頬を撫でる。

「涙の跡が付いている」
「ーーあっ……いっ……うっ……」

今頃、羞恥心が！

「とっとっ当然です。じっ事故って聞いたら、ふっ普通、おっ驚きます。真斗さんだって」

「でもさぁ」と真斗さんが意地悪く言う。

「僕はあそこまで真っ青にならなかったよ」
「あっあれは、真斗さんの運転がですね……」

「とにかく」と真斗さんは人の話を聞かず言う。

「圭介、彼女はメチャお前のことを心配していたんだからな。重々お詫びするんだな」

そう言って着いた先は、見上げると首が痛くなりそうなほどの高層マンションの前。

「ーーここどこ？」