お見合い結婚狂騒曲
だが、今はそんな事を言い合っている時じゃない。二人揃って救急外来の入り口を入る。

「すみません、葛城圭介は今どこに……」と真斗さんが受付に声を掛けたその時、「悪かったな」と背中の方から声が聞こえた。

ん? と振り向き、アッと声を上げる。
真斗さんも狐につままれたような顔をしている。

「ーーお前! 生きていたのか……幽霊とかじゃないよな」
「勝手に殺すな!」

葛城圭介がトンと足を踏み鳴らす。

「足だってちゃんとある」

それでも、葛城圭介の頭には包帯が巻かれていた。

「頭を打ったんですか?」
「真央、すまない。デートがおじゃんになった」

もしかしたら……。

「それを言うために、ここへ呼び出したんですか?」
「ああ、謝罪は速やかに、が僕のモットーだからな」

メラメラとドス黒い怒りが湧き上がってきた。

「何て紛らわしいことを!」

剣のある声が葛城圭介を怒鳴り、彼の胸倉を掴むと睨み付ける。

「私は瀕死の重体説を考えて……」

あれっ? さっきまで何ともなかったのに……。
葛城圭介が私を見下ろしながら、目を見開く。

「あーあっ、圭介が泣かしたぁ」

真斗さんがヨシヨシと頭を撫でる。

「緊張の糸がプツンと切れちゃったんだね」
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