お見合い結婚狂騒曲
「僕の自宅。じゃあな、真斗、ありがとう」

葛城圭介は車を降りると共に、私の手を引き私まで車から降ろす。
ーーなぜ?

「嗚呼、礼は改めて貰うよ」

パフンとクラクションを鳴らしたBMWは、颯爽とした後ろ姿を見せ、走り去った。

「ーーあの」と葛城圭介に声を掛ける。

「現、状況をどう理解すれば良いのでしょう?」
「話は後だ。とにかく中に入ろう」

エッ、イヤイヤ、待て待て、男の家になぜ連れ込まれなければいけないのだ。

「私、帰ります。圭介君は……そうだ、ゆっくり休んで下さい。そうです、そうしましょう!」

ウンウンいい考えだと頷いていると、「反論は後で聞く。ほら、おいでなすった」と彼の視線を辿ると……ウワッ、何だ! 黒々とした一団が、打ち寄せる波のようにこちらに向かって来る。

「早く!」と彼はマンションのキーを開けると、私の背を押し、素早く中に入る。

「お帰りなさいませ」

クラシカルな音楽が流れる中、穏やかな声が出迎えの挨拶をする。外とは別世界のように静かで上品な空間だ。

「ニュースを拝見いたしました。お加減はいかがですか?」
「ああ、ただいま。大したことはない。心配を掛けたね」

「あっ、そうそう」と葛城圭介が私の肩を抱き言う。
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